高知工業高校同窓会 会報

職場だより 「念願の新社屋が完成」

 

右城 猛

昭和45年土木科卒

 

 昨年の8月31日に念願であった新社屋を高知市介良に完成させることができました。新社屋を建設した経緯や設備について紹介させていただきます。

 昭和61年に故郷を守りたいという思いで高知に帰り,株式会社第一コンサルタンツに入社しました。平成19年に社長に就任したとき,「高知を守る」を経営のスローガンに掲げました。建設コンサルタントを生業としていますから「高知のインフラを守る」のは当然ですが,「高知を地震から守る」ことが私に課せられた使命であると考えました。

 高知では南海トラフ巨大地震対策が最重要課題です。わが社でもBCP(事業継続計画)を策定していたものの,社屋は津波浸水区域にあり,旧耐震基準による建築でした。地盤は液状化の恐れがありました。

 BCPを絵に描いた餅にしないためには,津波浸水区域外へ社屋移転する以外にないのですが,景気が好転する気配はなく,経営のことを考えるとその選択はありませんでした。

 そんなときに,あの東日本大震災が起こりました。3ヶ月後に,高野光二郎先生(現・参議院議員)が「宮城県を元気にする高知応援隊」を結成したので,それにわが社の社員14名も加えていただき,現地へ行きました。

 津波による被災状況を目の当たりにしたとき,「どんなことがあっても社屋を被災さてはいけない。発災直後に現場に駆けつける準備を整えておかなければならない」と思い,5年以内に津波が来ない場所に新築移転することを社員に約束しました。

 移転すると言っても,建築資金の目途も土地のあてもありませんでした。高知市の平地部はほとんど津波で浸水します。周辺の高台は市街化調整区域に指定されています。社屋の敷地には1,000坪が必要と考え探し回ったのですが,社員の通勤や予算のことも考えると,適地が見つかりませんでした。

 そんんなとき,不動産会社「青い鳥」を経営されている池本洋一氏(昭和47年化学卒)にお世話いただいて現在の場所が見つかりました。平成25年9月のことです。高知市の東端に位置し,隣は南国市です。7キロ北には高知自動車道南国IC,1キロ南には高知東部自動車道南国南IC,6.5キロ東には高知空港があります。ロケーションは抜群です。市街化調整区域ですが,既存宅地なので社屋を建てられます。幸運にも理想の土地が見つかりました。

 平成24年12月に起きた中央道笹子トンネル天井板崩落事故をきっかけに,道路施設点検業務が大幅に増えたことで予想以上に業績を伸ばすことができ,これによって資金の問題も解決できました。

新社屋は地域の防災拠点としての機能を備え,社員が誇りを持てる理想的な建物にしたいと考えていました。それで「社屋新築準備委員会」を立ち上げ,社員が希望する建物の間取りや設備を検討してもらいました。

 その一方で,徳島大学,愛媛大学,高知大学,高知工科大学の先生方にお願いし,防災拠点としての課題や対策についてアドバイスをいただきました。

 建築工事は母校の大先輩である故・岸之上守代司氏(昭和16年建築卒)が創業した岸之上工務店に,土木工事は澤本健雄氏(昭和42年土木卒)が社長されている富士建設工業に,舗装工事は大西隆氏(昭和47年土木卒)が勤務する前田道路に担当してもらいました。

 東北の震災復興と東京の建築ラッシュで資材や職人の確保が困難な状況であったにも関わらず,建築工事の現場監督をしてくれた和田誠氏(平成3年建築卒)をはじめ母校の先輩や後輩の皆様のおかげで,当初の計画通り平成27年8月末に竣工することができました。私が決心して4年2ヶ月後でした。

 社屋は公共の避難所と同等の耐震強度を持たせました。非常時用発電装置,防災井戸,衛星電話そして防災教育のための研修室なども完備しました。

 熊本地震直後に会社がある介良野自治会からの要望を受けて,研修室と食堂を緊急避難場所として開放する災害協定を結びました。

 今後はさらに社業を発展させて,高知の雇用を守り高知のコミュニティを守れる企業を目指したいと考えています。

 

会報No.56号 2017年2月 「職場だより」

土木技術に魅せられて「会報No.43号 2004年2月」
同窓会総会記念講演 2003年5月4日
土木技術に魅せられて原稿.pdf
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念ずれば花ひらく「会報No.58号 20019年2月」
同窓会総会記念講演 2018年4月29日
念ずれば花ひらく会報掲載.pdf
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社歌【ガードレール】

 作詞:河村泉兵衛

 作曲:金子裕則

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